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WR1456 何か変だな、デフレの論議 (2) −我が国始め各国で起きているデフレ現象は、調整インフレで克服できるような性質のものではなく、世界の経済社会の発展に伴う必然として、これを受け入れ、対応を考えていくべきもののと思われます。デフレ対策の本質は、調整インフレのような現象的対応ではなく、まさに構造改革にあると申せます。 

(2003/2/12)

元国土庁審議官:仲津真治



4 何でも安く出来ます

このデジタル化の効果の中で特筆すべきは、コストの低下です。かつての大型電算機を遙かに上回る機能をもつパソコンを個人で買える時代になりました。携帯電話は、中高生から普及しました。かつて、電話は名士しか引けなかったなかったのにです。情報通信の発展が生み出したインターネットを使えば、郵便の約百分の一のオーダーの費用で手紙をやり取り出来ます。 年賀状が減り始めたのも、その現れのようですね。

こうした事は、ものやサービスのコストを大きく下げずにおきません。当然、物価水準にも相当の影響を与えます。いま進行中のデフレには、このデジタル化が相当効いていると見るべきです。

5 市場経済と違うアプローチ

さらに、NPOやNGOの登場は、社会の中で、通貨を使わない、あるいは通貨で表現されない、ものやサービスの供給を増やしつつあると見られます。産業革命以降の社会の発展は、何でも市場で供給され、消費されるように世の中を変えてきましたが、人々の価値観や活動はもっと根深いところや広がりを持っているようで、高度に発達した現代では成熟社会を到来させ、市場を通さない、ないし市場のウェィトの低い活動を活発化させ、 人々を充足ささせつつあるようです。

となりますと、市場を通せば値段がついて相応の対価を支払わなければならないところを、そうでない方法、例えばボランティア活動やエコマネーで物やサービスを受けるとなれば、これは、物価を下げる方向に働くとみてよいと思います。

前述の世界的な工業化やデジタル化の進展に比べれば、この部分のウェイトは小さいでしょうが、決して無視きない要因だと思います。

6 現実を受け入れた取り組みを

以上、申し上げてきたことをふまえると、我が国始め各国で起きているデフレ現象は、調整インフレで克服できるような性質のものではなく、世界の経済社会の発展に伴う必然として、これを受け入れ、対応を考えていくべきもののと思われます。調整インフレなるのものを始めても、一時的な効果を上げだけで、大きく長引く混乱を残し、この国の力を大きくそぐことになるでしょう。

ただでさえ、日本の物価水準は高いのです。少し前に公表された世界各都市の比較でも、東京の物価水準は世界一高い事が明らかになっています。もちろん、為替レートによって変わる面がありますが、現実に存在する通貨の交換比率は、為替相場によるわけでして、 計算された購買力平価ではありません。従って、今の為替相場で換算して、比較される各国の物価水準は、重みをもって受け取られるべきものです。

その物価水準が非常に高いことの意味するものは、日本にとってかなり深刻なものがあります。それは、高物価をもたらしている要因が、今なお優位な競争力をもった製造業の主力と、競争力のない産業分野が併存する二重構造にあるからですし、それが日本社会のもつ構造的特質と深く関わりがあるからなのです。 競争力のある分野に従事する人々の 比率が、全体の約二割と大変低いのです。ここに八割の人々が寄りかかっている構造があります。

構造改革と言うからには、ここにメスを入れ、日本社会を変え、立ち直らすべきものです。デフレ対策の本質は、調整インフレのような現象的対応ではなく、まさに構造改革にあると申せます。

皆さんは、どうお考えになりますか。

(完)

(2003/2 原稿作成)


仲津真治:
http://kokoroisan.com/nakatsum/
昭和19年(1944)大阪に生まれる。 昭和44年京大法学部卒業後、建設省に入省、同省等に勤務、その間ハーバード大学に2年留学、修士。
茨城県課長、東京工大講師、埼玉大学客員教授、大阪府総括参事、建設省・国土庁・北海道開発庁で下水道、防災分野、総務などの課長を経験、平成8年国土庁審議官で退職。現在(株)ゼンリンの常務取締役。
「ハイブリッド国家日本の創造」(ヴォーゲル ハーバード大学教授との共著)(平成9年 ぎょうせい)、
「四季おりおり」(七五調雑詠集)(平成13年 講談社)、
随想集「土曜の夜更けに」(共著 平成14年 千代田フォーラム記念出版委員会)、
川柳集「相合傘」第二号(共著 平成14年 JDC)、
2001年 詩の旅」(CD付き)(平成14年 講談社)