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WR0686 新世紀の予兆から見えてくる近未来の社会像 −「IT革命」の進展で、前回の「産業革命」により常識となった「規格化、同時化、中央集権化」に象徴される価値観が逆転される変化が社会全般にわたって起こりつつあり、時代の過渡期の大きな混乱が生じている。本稿は新世紀初めの記事ということで、IT革命進行途上で姿を現しつつある「新世紀の予兆から見えてくる近未来の社会像」について考察してみたい。

(2001/1/1)

GCN代表:奥田澄雄



● はじめに

 「今日起こりつつある変化の大部分は、相互に無関係ではないと言うことである。また、決してでたらめに脈絡もなく、こうなってきたわけではない。たとえば、核家族の崩壊、地球全体のエネルギー危機、新興宗教の隆盛、ケーブルテレビジョンの普及、フレックスタイム制の一般化、有給休暇、健康保険など、一連の付加給与の増大、カナダのケベック州からフランスのコルシカ島まで、世界各地に於ける独立運動の出現といった現象は、それぞれ無関係な出来事のように見えるかも知れない。しかし、注意深く観察すれば、事実はまったくその逆なのだ。こうした現象をはじめ、そのほかもろもろの一見無関係な出来事ないし動向は、相互に深い関連を持っている。それらの現象は、実は、より大きな現象の一部に過ぎない。それは産業主義の終焉と、新しい文明の出現を意味している。、、、
 自覚しているかいないかは別として、われわれの大半は、すでに新しい文明の創造に参加しているか、あるいはまた、それを拒否する勢力に荷担しているか、そのいずれかである。、、、  この新しい文明は、一方で旧体制を打倒しながら、今日の官僚体制を崩壊に導き、国民国家の役割を弱め、帝国主義の桎梏を脱した世界に半自立経済を発生させる。新しい文明は今日より簡素で、より効果的な政府、しかもこれまでに地球上に存在したいかなる政府より、いっそう民主的な政府を必要とする。それは独自の世界観を持った文明であり、時間、空間、論理、因果関係についても、独自の考え方を伴っている。とりわけ重要なことは、産業革命によって分離を余儀なくされた生産者と消費者を再び融合させ、「生産=消費者(プロシューマー)」とでも言うべき存在に支えられた、明日の経済をつくりだすことである。こうした理由だけからでも、新しい文明は、われわれが多少知的な努力さえすれば、歴史上はじめて人間性に溢れた文明になりうるはずである。、、、
 要するに、われわれは官僚機構に見られる業務の部門別区分といった組織を廃して、人間の脳神経のように、相互に密接な関係を持つ集団から構成される、世界システムを求めて動いているのである。、、、
 新しい文明にあっては、少数のマスメディアが文化を支配するのではない。相互に作用し合う脱画一的なメディアが、実に多様な、しばしば高度な個性的なイメージを人々の意識の流れの中に供給する。、、、」

(「第三の波」:アルビン・トフラー著(日本放送出版協会1980年)より引用)


 筆者は、人類がインターネットというツールを手にしたことにより起こる変化は、人類の大きな時代の変化に相当するに違いないと、1990年代前半のインターネット商業利用黎明期以来、感じている。昨年初めに起こったインターネットバブル事件などは、まだ、人類のこの新しく始まるもう一つの時代のほんの入り口で起こった小さな事件に過ぎないと思う。

 何故なら、IT革命の本質は、個人が使える料金で地球全域のコンピュータ網が出来たことにより、

・個人が世界のさまざまな情報源からダイレクトに情報を入手できる
 (従来のマスメディアが報じないオリジン情報も得られるようになる)
・個人が世界規模で情報発信できる
 (個人が自己を主張できる)
・個人が世界規模で連携できる
 (人の頭脳の連鎖反応を無限大に引き起こす)

ようになるということであり、その結果として、個人が主体的な情報パワー(=社会を支配するパワー)を持つようになるからである。

 この変化は、結局は人の活動する全ての場面に関係するが故に、最近の世の中の変化は、このことに関連して起こっているものが多い。しかも、この変化は、産業革命により常識的となった「規格化、同時化、中央集権化」に象徴される価値観を逆転する変化なので、社会全般について、時代の過渡期の大きな混乱が生じている。

 本稿は新世紀初めの記事ということで、IT革命進行途上で姿を現しつつある「新世紀の予兆から見えてくる近未来の社会像」について考察してみたい。


● 新世紀の予兆から見えてくる近未来の社会像

 最近の社会全般にわたる変化の予兆を取り上げ、それらから起こるであろう近未来の社会像を推察してみよう。

・従来の大組織のメディアとは別のダイレクトルートの膨大な情報が伝えられるようになりつつある

 筆者は一昨年に「アップル副社長のWORLD PC EXPO基調講演から見えてくるインターネットビジネスの未来像(1) −ごく近い将来、地球全域から、無数のインターネットデジタルTV放送局が出現して本当に見たい番組が見られるようになる?」:http: //world-reader.ne.jp/ibr/okuda-990914.htmlで近い将来、個人や小規模組織により、無数のインターネットを通じたデジタルTVのようなメディア(注:最近、始まった従来のTV局によるBSデジタル放送のことではない。余談だが、筆者はBSデジタル放送は急速な拡大は出来ないと思う。従来方式TVに比べ、革新的に興味のあるコンテンツも放映されていないのに、誰が、数十万円もする受像器を買うのだろうか? はたして、今のBSデジタル放送は、ラジオからTV、白黒TVからカラーTVへの変化ほどのインパクトはあるのだろうか? 筆者には今のところそのようには思えない。また、将来やろうとしていることも、ほぼ全て、近い将来、高速のインターネット上で実現されてしまうのではないだろうか?)の出現を予想したが、この動きは、すでに米国では始まりつつある。この動きは、今後、地球規模で拡大し、今後の地球市民は、従来のメディアが伝えない、しかし、かなり重要なダイレクト情報なども入手できるようになると思われる。つまり、為政者は、国民の知らない裏側で、国民の意志に反するような動きは出来なくなる傾向が強まるということである。この動きは、封じようと思っても不可能な今後の社会の趨勢であると考える。また、その他のあらゆる分野の情報が流されるようになり、ほとんどの人の多様な情報需要を満たせるような世の中に、どんどん、近づいて行くものと思われる。筆者は、10年後のメディアは、むしろ、こちらの方が主流になるのではないかと感じている。
 また、公的組織の情報も、ダイレクトに、どんどん公開されるようになっている。この動きは米国が非常に進んでいるが、日本も、急激にその方向に進みつつある。これは、考えてみれば、もともと、納税者である国民の情報であるから、当然である。つまり、従来のような記者クラブを通じたマスメディアなどによる間接情報でなく、オリジンダイレクトな情報を、どんどん入手できるようになるのであり、また、納税者としての個人も、ますます、このような要求を強めるのは必然の動きである。民間企業の世界でも、株主に対する情報公開が、ますます盛んになっている。これは、次の時代の優良企業としての重要な指標の一つでもある。例えば、企業がクレーム隠しなどしようとしてもインターネットを通じて、瞬く間に情報の連鎖反応が起こるので、今後は、クレーム隠しなどという行為は企業にとって致命的な行為となる。
 また、インターネットで世界連携して社会的パワーを手にしたNGOの動きが世界の政治に影響を与えるような兆候も、頻繁に見られるようになってきた。

・無党派層が自己主張の連携行動を開始した

 長野や栃木の選挙結果で分かるように、無党派層というのは、自己主張がない人々の事を言うのではない。自己主張しなければならないと、本当に思うときには、動く層である。今、永田町やマスコミが、「無党派層は無関心層」と捉えているのは、世の中の浅い見方であると思う。旧来の政党が、未だに「組織票」だけを重視する考え方は時代遅れである。無党派層は、今までは、自分たちが動かなくても、大勢に影響ないと思っていたからこそ、無精を決め込んでいただけである。それでは危険と感じれば、自己主張するのである。長野県知事選挙ではインターネットを使用したボランティア活動がこのような無党派層の選挙行動に大きな影響を及ぼした。無党派層は、インターネットを通じた個人連携により、社会を支配するパワーを持ち始めたのである。
 つまり、今、選挙に勝とうと思えば、この「無党派層」を味方に付けるということを最重点に考えるべきなのだ。それには、一部の国民だけでなく、最大多数の国民の納得するガラス張りの政策を遂行するしかないのである。インターネットの普及により、 国民が情報パワーを持つようになる故に、一部の特権者が裏側で国民の意思を無視して、自分たちに都合の良い政策を行うというようなことは出来なくなる。その意味で、今後の日本の為政者は、田中長野県政や石原都政への県民や都民の強い支持が極めて未来社会への示唆に富んでいることを心に命じるべきである。(為政者は、昨今のインターネットの政治に関する会議室で、「政治が変わらなければこの衰退の坂をますます転げ落ちていくのではないかとの危機感を覚えるようになっています。これまでは不満はあっても、今のような危機感と結びつくということは無いことでした。」などという発言が、飛び交っていることを肝に銘じるべきである。)

・過去の延長でない「国民の側から見た、将来を見据えた全体的デザインに基づく政治」への待望感が非常に強くなっている

 石原都知事や田中県知事は、明らかに過去の延長でない政治の進め方を示し、行動し始めている。その根底にあるものは、「都民、県民の側から見た」政治手法という点に集約できるであろう。また、「将来を見据えた全体的デザインに基づく政治」ということであろう。今、無党派層を中心とする国民の多くが望んでいることは、この「国民の側から見た、将来を見据えた全体的デザインに基づく政治」ということに尽きよう。日本も、いよいよ、「政治屋」の時代が終わり、創造性や胆力があり、真に国民の側に立った清明な政治家が登場する時代に入っていくのではないだろうか。
 筆者は、日本国民が、近い将来、選挙行動で、このような社会を望む意思を表明するものと予想している。現に、ネット上では、いかにすれば、政治に対し、国民としての意志を反映できるか、というような議論の場が、盛んになりつつある。従来、こういう世界は、一部のマニア?的な人が多かったが、最近は、「普通の」人が真面目に議論している姿が多くなってきているのが非常に印象的であり、これなども、近未来社会変革の予兆と捉えるべきであると考える。
 筆者は、近い将来、このような実は今後の選挙活動の中心となるに違いない層の人々の心を捉える政治側の動きが、必ず、出現すると予想している。それは、従来のいずれかの政党の革命的な自己変革かも知れないし、他の分野からの新しい知的な人材が新たに創る政党が主体となるかも知れない。このような動きが出てくれば、おそらく驚異的な得票を得て、次世代の政権の中心になっていくのではないだろうか?(もし、近い将来、そのような転換が図られないとすれば、最近のCIAの予想のように10年後の世界に於ける日本の地位は、大きく衰退するものと予想される。著者は、日本国民は、そのように愚かな国民ではないと確信している。)

・社会的不公平感の解消の動きが始まった

 石原都知事は、都の外郭組織の大胆な整理に乗り出した。この動きなどは、都の無党派層が、最も共鳴を覚えている動きであると思われる。今、民間の世界では、壮絶な生き残りのための革新が行われ、そのために「会社のために一生懸命尽くしてきた人」までもが、厳しい状況に追い込まれるような事態が多く発生しているのに対し、政治の世界や、公的あるいは準公的組織および公的組織に支えられる民間部門が、そのような壮絶な革新にさらされているという情報は極めて少ない。無党派層が、最も納得の行かないのは、この点ではないか? 公共事業反対の声が多いけれども、本当に、無党派層が危機感を感じているのは、(無駄な公共事業は論外としても、)公共事業や公的資金などに付随するこのような問題であると思われる。
 つまり、このような緊迫した財政状態下にあっても、「改革」が行われることなく穴の開いたバケツのように水(税金)がこぼれていることに危機感を感じているのではないだろうか。このような諸問題について論じているホームページも、数多く存在する。

・消費者が生産者と直結または近づくために消費者が生産過程に大きな影響を与えるようになる

 産業革命以前には、物の生産というのは、基本的に、一つ一つ手作りで作られたのであった。消費者にとって、理想的な物とは、各消費者にもっとも適した個別生産による商品である。産業革命は、物の値段を下げたが、この本来、最も重要な商品としての要素を、規格化、同時化というような生産方法であるが故に失ったのである。IT革命というのは、情報の非常にきめ細かい取り扱い・相互交換を可能にするために、消費者にとって、最適な商品を生産し、届けるということが、実現しやすくなるのである。
 現に、世界最大の自動車メーカーであるGMなどは、インターネットで、消費者の希望を取り入れて、短期間に消費者毎に希望の製品を届けるような生産システムを開発中であるようだ。
 こう考えると、最近のように多量に販売されるようになった携帯電話などは、もっと、消費者の好みを反映できるような生産方法がいくらでも考え得るし、また、世界のブランド商品会社と組んで、そのデザイン力を活かした商品を創ることも可能であろう。宝石を散りばめた携帯電話が欲しいという人もいるかも知れない。

・以前なら、信じられなかったような大企業が倒産する一方で、優良企業は信じられないほどの速度で革新を遂げつつある

 10年前に、長期信用銀行の倒産やダイエーの混迷を予測できた人がいるだろうか?これが、時代の変革期に起こる現象であろう。つまり、時代の変革期というのは、それまでの延長線上で物事を計ることが出来ない時代なのである。スーパーというのは、かって、価格破壊と品揃えで、町の商店を席巻していったが、最近は、多くの人が忙しくなったために、時間も費用の一部と考える人々が多くなり、その多くの部分をコンビニに奪われつつあるのではないだろうか? また、価格破壊という点では、新たに出現したディスカウントショップに破れつつある。西友が都内で始めた即日配達インターネットスーパーなどは、人口構成の老齢化などを考えても、常時接続が普及すれば有望なのでは無かろうか?
 このような時代には、大企業といえども、「時代を見据えた俊敏な変革」こそが、繁栄を継続する唯一の方法であろう。このことは、現在も優良企業であり続けるSONYなどの動きを見れば、よく分かる。SONYは、すでにハードウェア中心の会社から情報産業ともいえる分野に転換済みである。

・日本に、海外の企業が多数進出し、国民は、あたかも自国の企業と同等のように扱うようになる(国民の価値判断が世界標準に近づく)

 最近、欧米の銀行・生保会社・証券会社、電力会社やスーパーが日本に進出し、話題になっている。しかしながら、このような動きは、今後、ますます、盛んになっていくものと思われる。特に、進出が激しい分野は、世界標準に比べて、日本企業の合理化が遅れている分野であろう。何故なら、そのような分野は、より効率的な企業にとっては、価格競争力で勝利できる可能性が大きいからだ。これは、消費者にとっては、より世界標準に近い価格で良質な商品を手にすることが出来るようになる動きでもある。
 この動きは、また、日本国民の価値判断を世界標準に近づける動きとも言える。例えば、米国の銀行のメニューなどを観察すると、ある金額以上の貯金を有する顧客に対しては、振込料金を無料扱いにするなどというサービスを行ったりしている。これは、何を意味するかというと、今までの日本の世界と違い、貯金が1000円の人と1000万円の人とは扱いが異なりますよ、ということである。また、顧客は、自分の立場なら、どちらが、有利かを条件を見て、自ら、判断しなければならない世界と言うことである。このように、今後の日本は、国民の価値判断基準が、どんどん世界標準に近づく方向に変化するはずである。
 このような動きは、国境など存在しないに近いインターネット情報により、消費者が海外の企業であろうと国内の企業であろうと躊躇無く世界でもっとも優れているものを選べる知識を持ったことが大きく影響している結果でもあることは言うまでもない。

・次の時代に適合する動きをする企業が彗星のように現れる(消費者にとって、真に価値のあるものが売れるようになる)

 最近、経済雑誌などで、「ユニクロ」の記事が花盛りである。ユニクロは、安い・安い割には品質がよい・デザインがよい・シンプル・色数が豊富・イメージ戦略がうまいといった特徴があり、今までの同種の業界を、圧倒的に凌駕して、急成長している。この企業なども、「徹底的に消費者のサイドに立つ」という姿勢が、消費者の心を大きく捉えたものと思われる。ユニクロは、インターネットショップをうまく用いているのも目立つ。つまり、同じ型の商品の色数を極めて豊富にし、それをインターネットショップで販売しているのである。これなどは、同社の非常に高効率的でフレキシブルな生産システムと結びついて、無駄な在庫を作らない販売を行っているのである。
 もう一つ、例を挙げると、「100円ショップ」の隆盛がある。これは、覗いてみると分かるが、ただ、安いから、流行っているというものではなさそうだ。つまり、顧客は、あたかも、縁日にでも出かけて、祭りの雰囲気の中で、何か、掘り出し物を探す、というような楽しさがあるのである。実感として、「こんなものが100円で売れるのか?」というような感じもして、顧客は、いつの間にか、予定外のものまで買ってしまい、しかも、それで、あとで、後悔することがないというような世界を創りだしている。
 このように、極限の価格低下の努力と、消費者が納得する品質を確保する努力で、今までにない世界が創り出せれば、これからも、いくらでも、売れる商品は出てくるものと思われる。つまり、今の消費者は、買う気がないのではなく、本当に買いたいものがないのではないだろうか? 企業は、このような消費者の要求を、探索するためにも、もっとインターネットを活用することを考えるべきではないだろうか?  また、コストダウンのためにも、インターネットは様々な局面で応用できる。例えば、海外企業との取引の連絡に電話やFAXの代わりに使うだけでも、桁違いのコストダウンが出来るし、また、やりとりしたデータはほとんどそのままデータベース化できるから、経理処理も大きくコストダウンできるはずである。

・我が国でも、会社が全てでなく、個人が主体的になり勤務会社を変えることが当たり前になる

 大企業の幹部をしている友人の話によると、最近の新入社員は、優秀な人ほど、入社後、5年くらいで転職してしまう傾向があるという。このような傾向を見ても、日本社会は、明らかに変わってきているのであり、(もちろん、より高い報酬をという望みもあるであろうが、)それよりも、人生に於ける自己実現というポイントに、関心の度合いが高まっているのではないかと思われる。
 また、企業側も、従来のように能力に関係のない年功序列式の待遇が不可能になりつつあるので、社員の待遇の仕方も、能力があれば、勤続年数には関係のない待遇をする方向に、急激に変化しているので、近い将来、日本でも、(良い意味での)転職は、むしろ優秀な人の勲章というような時代が来るに違いないと思う。当然ながら、外国の会社の進出は、そのことを、ますます助長するであろう。その意味で、筆者は、今の派遣業の隆盛は、それに至る過渡期の現象ではないだろうかとも感じている。
 当然ながら、転職活動の交換には、費用の安さや、強力な検索機能などにより、インターネットの方が、従来の新聞などのメディアより、遙かに優れているのであり、このようなインターネットの優位性は、より適切な求人と求職のマッチングを助長して、転職活動をますます助長することであろう。

・通信環境が世界標準に近づく(インターネット低額常時接続の急拡大・インターネット携帯電話の爆発的拡大)

 昨今の国民サイドからの強い要求で、日本のインターネット環境が、(未だ、米国などには大きく遅れているとはいえ、)急激に改善されつつある。最近のADSL方式による定額常時インターネット接続の普及の兆しなどは、その象徴的な例である。インターネットというのは、実際に使ってみれば、すぐに感じることだが、時間料金を気にしながら、使っているうちは本格的な利用には至らない。安い料金で常時接続が実現して、初めて、あらゆる意味で、本格的な利用が出来るようになる。通信速度は速いに越したことはないが、筆者は、「5年先の光ファイバー全国網」よりも、「一年後のADSL全国網」の方が、日本にとって、遙かに重要であると思う。
 5年等という時間は、インターネットの世界の感覚では「無限」に近い時間と考えるべきである。5年間にインターネットの世界で、起こることは、誰も説明の出来ないようなことになる可能性もあると思う。つまり、国民のほぼ全てが、今直ぐ、安い料金で常時接続が出来るようになることが大事なのである。全ては、そこから始まるのではないだろうか。
 また、携帯電話によるインターネットも、簡便なモバイルという意味で、極めてインパクトが大きい。特に携帯電話のインターネットとGPSなどの位置情報システムと後述する音声入出力システムとが結びつくと、膨大な新社会システムが、出現するのでは無かろうか? 例えばタクシー料金が自由化されるとすれば流しているタクシーの繁閑度に応じて、新幹線のように料金を変えて、それを携帯インターネットで消費者に流せば、位置情報により自動的に結びつけられる近くにいる客が、インターネットを通じてすぐにタクシーを呼ぶなどと言うことも可能になるであろう。客は、今、こんなに料金が下がっているなら、地下鉄でなく、タクシーを使おう、などという動きが出てくると思われる。タクシーの側も、ナビゲーションシステムの上に表示される客までの経路にしたがって、客を拾いに行けばよい。このような一連の連絡は、やはり、音声が使えないと成り立たないと思われる。(この程度のアイディアは、上記開発が出来れば、いくらでも思い浮かぶように思われる。)
 なお、有線でも携帯でも、今、最も重要なのは、徹底的な自由競争下で、通信料金を徹底的に下げることであろう。有線にしても、携帯にしても、現在の通信料は高すぎるように思う。実際に、若い人などの支出が、通信費用に食われて、他の分野への消費が圧迫されているという現実が起こっているが、これなども、(価値観の変化も、もちろんあるが、)通信料金が高すぎることも一因であろうと思われる。
 最終的には、無線の方も定額接続という方向が必然なのではないだろうか? また、日本の携帯のインターネットの世界では、電話機の販売元とプロバイダーが同一事業者であるために、「公式サイト」という考え方が普及してしまったが、これは、確かに、携帯インターネット普及に寄与した面もあるが、よく考えてみると、個人や小企業を含む全ての情報提供者に対して公平でないと言う感じがする。情報提供者を携帯電話会社が主観的に選択するのでなく、全ての情報提供者に公平な機会を与えて、消費者の選択に任せるという世界が重要なのでは無かろうか? つまり、このような世界を創らないと、新規有望企業の挑戦がなかなか難しくなるように思われる。有線のインターネットの世界では、そうなっており、また、携帯インターネットの世界でも、ヨーロッパなどでは、電話機の販売者とプロバイダーは別のようであるから、この辺は、オープンな方向になるものと考えられる。つまり、今の日本の携帯インターネットの考え方は世界標準とはならないのではないだろうか。

・情報処理産業が、より適切な方向に進む(LINUXの急拡大・JAVAの急拡大)

 パソコンのOSは、WINDOWS一色なってしまった感があったが、最近、LINUXという無料で開放されたOSが急拡大しており、WINDOWSの独占が、崩れつつある。これは、トフラーも指摘しているように、「人間の脳神経のように、相互に密接な関係を持つ集団から構成される世界システム」が、最近のIT革命で可能になった故に実現できた個人レベルの世界連携の一つの動きである。つまり、インターネットで結ばれた世界中の知性が、人の頭脳の連鎖反応を無限大に引き起こしながら、基本的に無料開放されたLINUXというOSについて、日夜絶えず改良を重ねているわけである。幾ら、大きな企業でも、このような動きには対抗し得ない。これも、元はといえば、北欧の一青年がLINUXというOSを提唱し、その内容を世界に公開し、インターネットで世界に呼びかけたところから、始まった動きである。(最近話題のゲノムの解析なども、こういう世界がなければ、決して、これほどの速度で進展しなかったであろう。なお、いろいろな分野に於けるこのような動きは、今後、無数に出現すると予想される。)
 OSのような基本的なソフトが一企業に独占されることは、価格政策なども含め好ましいことではなく、今後、この方面でも、正常化に向かうものと期待される。また、JAVAというネット上でやりとりできる様々なアプリケーションユニットが、使えるようになってきたのも、ネット上の融通性が拡大して、好ましい方向である。今後、このようなものをうまく使って、インターネット携帯電話は、電話機能の他に、財布・遠隔万能リモコン・証明書・鍵・各種チケットなどの機能を包含していくものに発展していくものと思われる。この領域も、今後、いくらでも新商品・新システムが作れる分野であることは確実である。

・音声認識・合成技術、人工知能技術の進展が、誰でも使えるインターネットを実現する

 これらの技術により、キーボードを使わなくても、あたかも人と話すような形でインターネットを利用することが出来るようになるであろう。最近のインターネット関連の展示会で、このようなものの先駆けとなるような技術を実現した会社の展示がなされていた。実は、この技術は、非常に困難な技術なのであるが、最初は、特定の範囲の話題に絞るなどと言うところから、次第に本格的なものが現れてくるようになるだろう。携帯インターネットのケースでは、入力が面倒なため、この技術は特に重要であると思われる。また車などのインターネットシステムでも、このことは非常に重要であると思われる。また、同時翻訳システム、指紋照合・声紋照合などの本人認証システムなども、その開発が懸命に進められているので、いずれ、次第に実用化の道が開かれ、電子商取引の強力なツールに発展するであろう。

・高齢者が生存中、安心して有意義に過ごせる社会システムが求められる

 今後の高齢者人口の増大は、高齢者が老後を有意義に暮らしたいという欲求を満たす各種事業の伸展を促すものと思われる。これは、国の施策としても、最重要事項の一つであり、今後、様々な工夫が、行われていくものと思われる。また、今後、国としても、この方面に就業人口を創り出す努力がなされようし、これは、今後の余剰人口の有力な受け皿の一つになるものと思われる。
 このような動きを助長するためにも、インターネットは大きな力になりうる。例えば、助力を求める人と、支援活動をする人とのマッチングなどは、インターネットにより非常に力となるであろうし、常時接続インターネットシステムにより、一人暮らしの老人なども、遠くに離れた友人や家族と相手の画像を眺めながら、ゆっくりと話をするなどということも可能になろう。低廉な遠隔医療システムなども実用化されるに違いない。
 さらに、もっと重要と思われるのは、高齢者が、動けなくなるまでは段階的に労働できる社会システムであろう。つまり、高齢者が動けなくなるまでは、希望すれば、その肉体的能力に応じて、報酬が得られる高齢者就労システムである。これなども、低額な常時接続インターネットシステムが全国に行き渡れば、高齢者が全国に分散して、インターネットを通じて様々な仕事の機会を得られるように出来るのではないだろうか? 最近、農業回帰のような傾向もあるから、自分の消費する農産物などを生産しながら、希望に応じた量の仕事をするなどと言うシステムが考えられないだろうか? 65歳を過ぎたら、本人の希望があっても、一切仕事をする機会がない社会というのは、逆に心寒い社会なのではないだろうか? 人は世の中の役に立っているという意識を失うと衰えるのも早く、結局は、半病人のような老齢者を増やすことになるのではないだろうか?
 またインターネットを活用して高齢者の知識欲を満たすための社会大学なども可能であろう。この大学の教師は、それぞれの経験による知識を持つ高齢者がお互いに教えあうなどというシステムも考えられるであろう。

・地方の魅力が増し、より適切な人口配分が行われる

 高速道路網の整備、新幹線網の拡大、インターネットの全国規模での安価な定額常時接続などの進展で、今後、地方の魅力が復活するのではなかろうか。高速道路などは、国際標準に比べてその料金があまりに高すぎるのは今後、大幅に改善の必要があろうが、特に、インターネットの全国規模での安価な定額常時接続の実現は、近い将来に実現可能であり、これにより、個人としても企業としても、地方の利便性が増すものと思われる。
 また、最近は、地方分権が時代の要望であるから、今後、中央政府としても、急速にその実現に向けて、舵取りを変更せざるを得ない状況であり、この面でも、地方の魅力が復活する可能性が大きい。国のそれぞれの地方を、いろいろな特色により魅力を持たせるという政策の進め方は、ヨーロッパの国々のやり方が、非常に参考 になるように思われる。
 新世紀は、これらの方向付けにより、再び地方に適切な人口配分が行われる方向に、進むのではないだろうか。

・人々の新しい体験をしたいという欲求が強まる(旅やインターネットサーフィンは、その一つの実現である。)

 衣食住が満たされた今、今後、人々の欲望は、「新しい体験」に、ますます、向かうように思われる。新しい体験の最たるものは、未知の場所への移動、つまり、旅行であろう。その意味で、海外旅行などの需要は、ますます、高まるのではないだろうか。また、休暇期間の延長は、時代の趨勢であろうから、今後は、日本でも、比較的安価に過ごせる長期滞在型の旅行施設が必要となってくるのではないだろうか。実際、多くの海外の国を歩いてみて、比較しても、日本の景観は、素晴らしいところが沢山あるから、発想を転換して、より旅をしやすい環境を工夫すれば、国内の観光業も復活できるのではないだろうか。
 また、擬似的な体験ではあるが、インターネットサーフィンは、やはり、もう一つの新しい探検への扉であるとも捉えることが出来よう。同様な意味で、(米国のユニバーサルスタジオを何度も訪れている)筆者は、大阪 に出来るユニバーサルスタジオジャパンの大成功を確信している。(筆者は、IT化による余剰人員は、結局レジャー・文化・福祉などの三次産業に吸収される方向に社会が変化していくのではないかと予想している。)

・環境問題・リサイクルが重視される

 地球を有限なものと捉えざるを得ない程に、人類の活動が大きくなってしまった今後の世界では、環境問題やリサイクルが重要視されるのは、時代の趨勢であろう。家電品のリサイクル法制化の動きなどもあり、これからは、人々の意識は、ますます高まるであろう。また、インターネットの活用により、資源の無駄のない利用、リサイクル活動の支援などが、ますます進展するようになるであろう。

・新しい技術が人々の生活に大きな影響を与え、人々の考え方も変える。(知能ロボット・バイオテクノロジーなど)

 これらの新技術は、新世紀には、いろいろ実用化され、さらに人々の生活を、便利なものに変えて行くであろう。特に、AIBOやHONDAの人型ロボットに代表されるようなフレンドロボットとでもいうべき知能ロボットが、近い将来、人々の生活に大きな影響を与えるようになるものと思われる。また、フレンドロボットは、インターネットと結びつくことで、距離空間を超越して、さらに興味深い応用がなされるものと予想される。(筆者は、自らが、知能ロボットの開発に携わっていた10年ほど前に、ある資料で、21世紀初頭から、フレンドロボットの時代が来るであろうことを予想した。)
 バイオテクノロジーは、まさに神の領域に踏み込む技術でもあり、この領域については、今後、あらゆる領域の人々の徹底的な議論を経て、その実現方法が決められて行くべきでは無かろうか。この領域は米国が先行しているようであるが、だからといって、全てを米国追随というのは、人類の将来に問題を残す可能性もあるのでは無かろうか? 本来、このような問題こそ、国連のような場で、全ての小国も含め「全人類ベース」で、その適用が計られるべきであろう。

・教育システムの抜本的見直しが行われる

 昨今の教育の荒廃や少年犯罪の増大は、国の将来にとって大きな問題となっているが、これなども、現在のシステムは、産業中心時代の社会ための「規格化、同時化、中央集権化」に都合の良い人間を育てるためのシステムだったのであり、やはり、今後の新しい時代に適合する教育システムを構築しなければならない時代に入って きたと言うことであろう。もう一つは、経済の高度成長期を通過して、国民全体の物事の判断が、あまりにもお金に偏ってしまったことに根本原因があるように思われる。こちらの問題の解決は、結局は「あらゆる大人が襟を正すこと」から、始まるのではないかと感じる。

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 本稿の最後に、予想される近未来の各業界の変化について、まとめてみよう。

・情報・通信業
  海外の情報・通信業が参入してくる
  インターネットなどマスコミ以外に有益な情報が増大する
  従来のTV・新聞の地位は相対的に低下する
  通信業は完全に自由化される

・広告・宣伝業
  インターネットに広告の主体が移動する
  インターネット向けの新しい広告会社が多数出現する
  TV・新聞の広告を扱っている大広告会社の地位が相対的に低下する

・建設・不動産業
    公的事業は各過程で情報の公開が行われるようになる
  住宅の自己所有へのこだわりが弱まる
  不動産価格は利用価値相当となる

・製造業
  消費者の意向をより重視した生産が行われるようになる
  購入・販売のかなりの部分がインターネット上に移動する
  きめ細かい経営管理・顧客管理が可能になる
  外部の企業とのインターネットによるネットワークが出来る

・物流業
  よりきめ細かい物流管理が可能になり、物流コストが下がる
  インターネット物販が増えるため、物流量は増加する(小口の配送が増える)

・流通業
  対面販売から、インターネット通販へとかなりの部分が移動する
  海外流通大手の進出により競争が激化する
  様々な資材の流通ネットが出来る
・サービス業
  あらゆるサービス業にインターネットが利用される
  消費者が便利になり価格も下がる

・観光業
  インターネットを通じた販売額が増大する
  人々の旅に対する欲求はますます高まる
  長期滞在型の施設が増える
  観光業に多くの就労機会が生じる

・農林・水産業
  きめ細かい情報入手が可能になり生産・漁獲の効率が向上する
  農産物、水産物のインターネット市場が整備される
  農産物・遠洋漁業の物品の価格が国際価格に近づく

・金融業・証券業
  他の業種からの本業界への進出が起こり業界地図が変化する
  今までのような横並びの事業姿勢は通用しなくなる
  企業の質を見抜く能力が要求される
  効率と個性が重要になる
  インターネット取引の与信機能付加事業に進出する

・商社
  従来の商社機能の多くは、インターネット上の他の業種の事業に吸収されていく
  有望事業への投資会社的な性格を強める
  インターネット取引の与信機能付加事業に進出する
  インターネットを利用したB TO B事業に進出する
  様々なインターネット関連事業に進出する

・高齢者向け事業
  老後を有意義に過ごすための事業が増加する
  老人向け事業に多くの就労機会が生じる

(2001/1/1 原稿作成)


GCN代表:奥田澄雄


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『日本・世界の再生』・次の時代
WR0416 21世紀への躍進のために:企業は来るべき21世紀のインターネット時代にどのように対応すべきか? −日本は、20世紀末に、高い付加価値を内包した工業力で世界のトップレベルに到達し、世界最高水準の生活レベルを実現した。日本社会が、今日までに獲得したレベルを維持していくためには、今後も、トップレベルの地位を維持していくことが、不可欠である。そのためには、今後、日本の企業がインターネットをいかに活用するかということが、最大の鍵となるだろう(2000/4/8)

『日本・世界の再生』・次の時代
WR0134 日本再生の急務 ―人の頭脳の連鎖反応を無限大に引き起こすというような種類の技術の進歩には特に注意が必要(1999/6/21)