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WR2247 「ユビキタス社会」の到来〜1 −筆者は約5年前、新世紀初日記事として、「WR0686 新世紀の予兆から見えてくる近未来の社会像」という記事で、新世紀の始点でインターネットが21世紀の社会に及ぼす影響を中心に近未来の社会像を予想した。本論では、この記事で予想したことを振り返りつつ過去5年間の変化を考察し、さらに、今後の社会が、このインターネット社会をますます発展させた「ユビキタス社会」に変化していき、それに応じて、今後、どのような社会変化が起きてくるのかを、予想してみたい。

(2006/1/30)

GCN代表:奥田澄雄



1. はじめに

「ユビキタス社会」とは、一言で表現すれば、インターネットが「いつでも、どこで も使える」ようになることにより、世の中の様々な事柄が、従来より飛躍的に便利に なる社会ということができるだろう。
筆者は約5年前の新世紀初頭の2001年1月に「WR0686 新世紀の予兆から見えてくる近未来の社会像」という記事(World Reader新世紀初日記事 )で、「筆者は、人 類がインターネットというツールを手にしたことにより起こる変化は、人類の大きな 時代の変化に相当するに違いないと、1990年代前半のインターネット商業利用黎明期 以来、感じている。」と書き出し、新世紀の始点でインターネットが21世紀の社会 に及ぼす影響を中心に近未来の社会像を予想した。本論では、この小論で予想したこ とを振り返りつつ過去5年間の変化を考察し、さらに、今後の社会が、このインター ネット社会をますます発展させた「ユビキタス社会」に変化していき、それに応じ て、今後、どのような社会変化が起きてくるのかを、予想してみたい。

2. 5年前に予想した近未来社会予想像

上記小論で筆者が5年前に予想した近未来社会予想像は概略以下の通りである。

人類がインターネットというツールを手にしたことにより、

・個人が世界のさまざまな情報源からダイレクトに情報を入手できる
 (従来のマスメディアが報じないオリジン情報も得られるようになる)
・個人が世界規模で情報発信できる
 (個人が自己を主張できる)
・個人が世界規模で連携できる
 (人の頭脳の連鎖反応を無限大に引き起こす)

ようになり、その結果、個人が主体的な情報パワー(=社会を支配するパワー)を持 つようになり、以下のような社会変化が起こる。

・過去の延長でない「国民の側から見た、将来を見据えた全体的デザインに基づく政 治」への待望感が非常に強くなる(社会的不公平感の解消の動きが始まる。)
・消費者が生産者と直結または近づくために消費者が生産過程に大きな影響を与える ようになる
・以前なら、信じられなかったような大企業が倒産する一方で、優良企業は信じられ ないほどの速度で革新を遂げつつある
・日本に、海外の企業が多数進出し、国民は、あたかも自国の企業と同等のように扱 うようになる(国民の価値判断が世界標準に近づく)
・次の時代に適合する動きをする企業が彗星のように現れる(消費者にとって、真に 価値のあるものが売れるようになる)
・我が国でも、会社が全てでなく、個人が主体的になり勤務会社を変えることが当た り前になる
・通信環境が世界標準に近づく(インターネット低額常時接続の急拡大・インター ネット携帯電話の爆発的拡大)
・情報処理産業が、より適切な方向に進む(LINUXの急拡大・JAVAの急拡大)
・音声認識・合成技術、人工知能技術の進展が、誰でも使えるインターネットを実現 する
・高齢者が生存中、安心して有意義に過ごせる社会システムが求められる
・地方の魅力が増し、より適切な人口配分が行われる
・人々の新しい体験をしたいという欲求が強まる(旅やインターネットサーフィン は、その一つの実現である。)
・環境問題・リサイクルが重視される
・新しい技術が人々の生活に大きな影響を与え、人々の考え方も変える。(知能ロ ボット・バイオテクノロジーなど)
・教育システムの抜本的見直しが行われる

予想される近未来の各業界の変化は以下の通りである。

・情報・通信業
 従来のTV・新聞の地位は相対的に低下する
・広告・宣伝業
 インターネットに広告の主体が移動する
・建設・不動産業
 不動産価格は利用価値相当となる
・製造業
 消費者の意向をより重視した生産が行われるようになる
・物流業
 よりきめ細かい物流管理が可能になり、物流コストが下がる
・流通業
 対面販売から、インターネット通販へとかなりの部分が移動する
・サービス業
 あらゆるサービス業にインターネットが利用され便利になり価格も下がる
・観光業
 インターネットを通じた販売額が増大する
・農林・水産業
 農産物、水産物の価格が国際価格に近づく
・金融業・証券業
 他の業種からの本業界への進出が起こり業界地図が変化する
 今までのような横並びの事業姿勢は通用しなくなる
・商社
 有望事業への投資会社的な性格を強める
・高齢者向け事業
 老後を有意義に過ごすための事業が増加する

3. 過去5年間に実際に起こった出来事

上記5年前時点に於ける近未来予想像のかなりの部分は、現時点で、すでに実現され つつあることを、読者の皆様も実感されていることと思う。なお、今の時点で、考え ると、当たり前のように感じるこれらの予想像は、5年前の時点では、いずれも、か なり、当時の現実とは、かけ離れたものであったことを、冷静に思い起こしていただ きたい。要するに、ここで、強調しておきたいのは、21世紀に入ってから起こって いる変化は、それまでの20世紀後半の50年間のほぼ、一貫した「規格化、同時 化、中央集権化」に象徴される価値観に基づく社会傾向とは、非常に異なる、新しい 日本を模索する動きが急激に起こりつつあるということである。つまり、我々は、今 まさに、時代の変革期に生きているということを認識し、行動すべきであるというこ となのである。

以下に、このような急激な社会変革を引き起こす主要な原因となったインターネット と携帯電話に関する過去5年間の出来事を整理してみよう。

・定額(かつ低額)ブロードバンドインターネット有線接続の全国普及

21世紀初頭の5年間に起こった最も大きな出来事は、ほぼ日本全域への有線高速 (電話線ADSLまたは光ファイバ:ブロードバンド)のインターネット定額(かつ低 額)接続普及である。このことは20世紀末の日本社会では実現されていなかった。 つまり、そのころには、速度の遅い、しかも、接続時間で料金の変化する文字情報中 心のインターネット社会であった。この段階のインターネットは、インターネット社 会のほんの入り口の出来事にすぎないのである。上記小論でも「インターネットとい うのは、実際に使ってみれば、すぐに感じることだが、時間料金を気にしながら、 使っているうちは本格的な利用には至らない。安い料金で常時接続が実現して、初め て、あらゆる意味で、本格的な利用が出来るようになる。筆者は、「5年先の光ファ イバー全国網」よりも、「1年後のADSL全国網」の方が、日本にとって、遙かに重要 であると思う。」と述べたように、今日の我が国の世界的に見ても高いレベルのイン ターネット社会が実現したのは、この定額(かつ低額)ブロードバンド接続普及のお かげである。2001年初頭の執筆時点では、かなり困難と思われた上記筆者の願望 は結果的に、その後の5年間で、ほぼ実現されたが、その急速な実現のために多大な 貢献をしたソフトバンク社の功績には、現在、長い低迷を脱して再び復活しつつある 日本国の国民の一人として感謝の念を禁じ得ない。(あの強引にも見えた同社のAD SL定額(かつ低額)常時接続インターネットの普及活動が無かったら、おそらく、 日本のインターネットは大きな後れをとったのでは無かろうか。)

・携帯電話(含む従量制インターネット)の爆発的普及

この5年間で起こったもう一つの重要な出来事は携帯電話の国民的普及である。携帯 電話が何故これほど急激に普及したのか、その主な理由は携帯からインターネット網 を経由する「無線の」(つまり、居場所にとらわれない真の意味のユビキタスな)、 さらに「格安な」メール機能にあると筆者は考える。もし、携帯電話が現在までの料 金体系(筆者注:ごく最近、一部、定額の通話料金システムが開始されたのは注目に値する出来事である。)のような高価な通話料金システムの電話機能のみしか持っていなかったら、普 及度合いは遙かに低かったに違いない。その証拠に、最近、人の集まるような、ほと んどすべての場所で、右手に携帯電話をかかえ、親指で操作する姿が、当たり前の光 景になっている。この光景と携帯電話で電話をしている人の光景との比率は、おそら く、二桁くらい違うのでは無かろうか?つまり、携帯メールの使用は、すでに、日本 人の日常行為になっているということである。メールというのは、受け手側が自分の 都合のよいときに見ればよいという点で、現代人の感性によくあう。そして、「いつ でも、 友人や家族とつながっている。」という感覚を持てる。
では、すでにユビキタスな世界は実現しているか、というと、実は、そうではないの である。今までに実現しているのは、上記のように文字情報レベルの情報量の少ない 環境でのユビキタスというレベルまでの序盤的なユビキタス世界にすぎないのであ る。
本格的なユビキタスな世界とは、現在、各家庭などからの有線経由の定額 (かつ低額)ブロードバンドインターネット接続の世界で繰り広げられているような、情報量や時間 を気にすることなく、しかも、それなりの画像表示面積で表示されるブロードバンドインターネット 接続が、「無線の」(つまり、居場所にとらわれない真の意味のユビキタスな)環境 下で実現される世界であろう。これが、実現するのは、今後の近未来のことと思われ るが、現在の携帯電話の世界のような情報通信量に応じた従量制の料金から、情報通信量にかかわらず定額かつ 低額で提供される(携帯電話を含む)無線経由のブロードバンドインターネット接続が必須であろ う。これが実現したとき、本格的なユビキタス社会が到来するものと思わ れる。

(以下「4.現時点から見た近未来の予想」:WR2248 「ユビキタス社会」の到来〜2 につづく)

(2006/1 原稿作成)


GCN代表:奥田澄雄


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